著作権の基礎

著作権の基礎

 世の中のネットワーク化が進み、一般の個人がインターネットによる情報伝達ツールとして ホームページを立ち上げる例が大変多くなってきました。このような「一億総ユーザ、一億総クリエータ」の時代が到来した一方で、そのことにより個々の著作権保護のルールが、まだ一般社会に浸透していないというのが実情です。

 身近なちょっとした行為が、実は著作権の侵害になっているというケースが非常に多いものです。 正しい知識を持ってお互いの権利をお互いで守りあう時代になってきました。その辺りの意識を変えて頂く一助になれば、と考えます。

1 知的財産権としての著作権

 「知的財産権」という言葉を耳にされた方も多いと思います。政府レベルでも「知的財産戦略本部」 を設置し、特許や著作権などの知的財産権の保護と活用のための国家戦略となる推進計画を打ち出しています。そう、著作権も「知的財産権」の一部として位置づけられています。少し、その辺りの話をしていきます。

 先ず、知的財産権とは?
人間の知恵から生み出された知的な経済的価値のある創作物を市場独占できる権利」 をいいます。

 一見難しそうですが、例えば「特許」などを思い浮かべてみて下さい。ある人が考えた発明について特許を取れば、特許を取った人が独占的にその発明の使い道を決められますよね?ということです。 そして、これら人間の幅広い知的創造活動の成果について、その創作者に一定期間の権利保護を与えるようにしたのが知的財産権制度というわけです。

 知的財産権を大別すると次のようになります。

無体財産権内容(保護対象)管轄
知的財産権産業財産権
(旧:工業所有権)
特許権発明:技術的な創作の中で高度なもの特許庁
実用新案権考案:技術的な創作
意匠権意匠:物品の外観
商標権トレードマーク、サービス
著作権思想・感情を創作的に表現したもの文化庁
※他に「半導体集積回路配置利用権」「植物新品種についての権利」等があります。

 ここで、知的財産権を「産業財産権」と「著作権」に大別していますが、実はこの2つには大きな違いがあります。それは、権利の取得方法です。産業財産権は、どれも特許庁に出願→登録を受けて初めてその人の権利となります。しかし「著作権」の場合は、創作したと同時に権利が発生(これを無方式主義といいます)し、何らの方式(登録、© マークなど)を要せず世界中で保護されるのです。

 但し、著作権にも登録制度はあります。これは、産業財産権のような権利取得のためのものではなく、著作権関係の法的事実を証明するとか、著作権が移転(譲渡など)した場合の取引の安全を確保するために存在しています。従って、著作物を公表したり、著作権を譲渡した、などという事実があった場合にのみ登録が可能となります。

 また参考までに、それぞれの保護(存続)期間は次の通りです。

  • 特許権:出願の日から20年
  • 実用新案権:出願の日から10年
  • 意匠権:登録の日から20年
  • 商標権:登録の日から10年
    (但し、更新が可能なため、使用している限り事実上半永久的)
  • 著作権:著作者の死亡後50年 (但し、映画の著作物は公表 後70年

 これを見て、特許権・実用新案権・意匠権の保護期間が意外に短いな?と思われた方 もおられると思います。これは、それぞれの権利が獲得されてから相当の期間が経過し た後に、陳腐化した(つまり、もうその頃には古臭い)技術などに独占権を与えるのはいかがなものか?ということでこのような期限が導入されたということのようです。

2 著作権の種類と対象(著作物・著作者)

 著作権は、「登録」などの手続きを一切必要とせず、著作物が創作された時点で自動的に発生する権利です。そして、その対象物は私たちの身の回りで普通に見聞きしたり使ったりしているものが殆どなのです。

 ですから、その物に対する権利意識などが芽生えにくく、実は法律上は権利侵害をしている、などとは夢にも思わず、あるいは「これマズイかもしれないな・・」となんとなくわかっていつつやっていることが結構多いのが実情だと思います。思い当たるフシがあれば、少しずつでも意識してみて下さい。

◆著作物
 著作権法で保護の対象となる著作物は、同法第2条1項で「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と規定しています。少し細かくみると、

①「思想又は感情」
 → 単なるデータ、事実を証明するもの(証明写真など)はダメ
②「表現したもの」
 → アイデア等はダメ
③「創作的」
 → 他人のモノマネはダメ
④「文芸、学術、美術又は音楽の範囲」
 → 工業製品等はダメ

 具体的には次のようなものが挙げられます。

著作物の種類例  示
言語の著作物小説、脚本、論文、講演、ホームページなど
音楽の著作物楽曲及び楽曲を伴う歌詞
舞踏、無言劇の著作物日本舞踊、バレエ、ダンス、ダンスの振り付けなど
美術の著作物絵画、版画、彫刻、漫画、舞台装置など
建築の著作物芸術的な建造物
地図、図形の著作物地図、学術的な図面、設計図など
映画の著作物劇場用映画、ビデオソフトなど
写真の著作物写真、グラビアなど
プログラムの著作物      コンピュータ・プログラム
その他二次的著作物(上記に手を加えて作成したもの)、編集 著作物(新聞、雑誌など)、データベース、キャラクター

◆著作者
 著作物を創作した人を著作者といいます。著作物の創作を他人に委託した場合は、報酬を払ったとか創作場所を提供したとかに関係なく、やはり 実際に著作物を創作した人が著作者になります。

 更に、共同著作物については、共同で創作に寄与した人全員が、ひとつの著作物の著作者になります。因みに、共同著作物の場合の権利保護期間は、共同創作者の最後の1人が死亡してから50年となります。

 この他に、私人ではなく法人が著作者になるケースがあり ます。これを法人著作職務著作)といいます。これには次の要件を全て満たすことが必要です。

  • 法人等の発意に基づくもの(企画者が法人などであること)
  • 法人等の業務に従事する者職務上作成するもの(外部に委託した場合などは除く)
  • 法人等の名義で公表するもの
  • 作成時の契約、就業規則等で別段の定め(従業員を著作者とする、など)がないこと

3 著作者の権利

 著作者の権利は、人格的な利益を保護する著作者人格権と財産的な利益を保護する著作権の2つに大別されています。

◆著作者人格権
 著作者だけが持つことができる精神的な利益を保護する権利で、これを譲渡したり相続 したりすることはできません(これを一身専属権と いいます)。この権利は著作者の死亡により消滅しますが、著作者の人格は死後も尊重されるべきとして一定の範囲で守られ、その遺志は遺族に引き継がれます。

著作者人格権内   容
公表権自分の著作物を
 ・公表するかしないか
 ・するなら、いつ、どのような方法で公表するか
を決められる権利
氏名表示権自分の著作物を公表するとき
 ・自分の氏名を表示するかしないか、
 ・するなら、実名か変名(ペンネーム)か
を決められる権利
同一性保持権自分の著作物の内容を、他人に勝手に改変されない権利

◆著作権(財産権)
 財産的な意味合いの著作権は、その全部又は一部を譲渡したり相続したりすることができます。著作権の保護期間は、著作者の死亡後50年(映画の著作物などは公表後70年)とされていますから、この権利はその期間内であれば子や孫まで引き継がれていきます。但し、相続権者が存在しない場合は消滅します。

著作権(財産権)内   容
複製権印刷、写真、複写、録音、録画などの方法により有形的に再製する権利
上演権・演奏権著作物を公に演ずる権利
上映権著作物を公に上映する権利
公衆送信権著作物を(*1)自動公衆送信したり、無線・有線放送する権利
公衆伝達権公衆送信された著作物を、受信装置を使って公に伝達する権利
口述権著作物を朗読などの方法で、口頭で公に伝達する権利
展示権美術著作物と未発行の写真著作物の原作品を公に展示する権利
頒布権映画著作物の複製物を頒布(貸与・販売など)する権利
譲渡権映画以外の著作物の原作品又は複製物を公に譲渡する権利
貸与権映画以外の著作物の複製物を公に貸与する権利
翻訳権・翻案権など著作物を翻訳、編曲、変形、翻案する((*2)二次的著作物を創作する、させる)権利
二次的著作物の利用権   原著作物(原作品)の著作者は、自分の原著作物の二次的著作物に対しても権利が及ぶ
例)「ハリーポッター」の原作者は、その日本語訳本に対しても著作権を持つ
(*1)自動公衆送信とは、サーバなどに蓄積された情報を公衆からのアクセスにより自動的に送信すること
(*2)二次的著作物とは、原作品(原本)を改変して創作された著作物、翻訳書、替え歌、プログラムのカスタマイズなど

◆著作隣接権
著作隣接権 これは、上記2つの権利(著作者人格権、著作権(財産権))とは少し違いがありますが、やはり著作権法により保護されています。

 著作隣接権とは、著作物の著作者(創作者)が持つ著作権とは別に存在する権利で、著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしている実演家レコード製作者放送事業者有線放送事業者に認められた権利です。それぞれの権利は次の通りです。

実演家の権利(保護期間:実演が行われたときから50年

著作隣接権内   容
氏名表示権実演家名を表示するかしないかを決める権利
同一性保持権実演家の名誉を害するおそれのある改変をさせない権利
録音権・録画権自分の実演を録音・録画する権利
放送権・有線放送権自分の実演を放送・有線放送する権利
送信可能化権インターネットのホームページなどで、公衆からの求めに応じて自動的に送信できるようにする権利
商業用レコードの二次使用料を受ける権利商業用レコード(CDなど)が放送や有線放送で使用された場合の使用料(二次使用料)を、放送事業者や有線放送事業者から受取る権利
譲渡権自分の実演を録音物等により公に提供する権利
貸与権など・商業用レコードを貸与する権利(最初に販売された日から1年)
・1年を超えた商業用レコードが貸与された場合に、貸レコード業者から報酬を受ける権利

レコード製作者の権利
 (保護期間:レコードの発行(発売)が行われたときから50年

著作隣接権内   容
複製権レコードを複製する権利
送信可能化権実演家と同じ
商業用レコードの二次使用料を受ける権利実演家と同じ
譲渡権レコードの複製物を公に提供する権利
貸与権など実演家と同じ

放送事業者(有線放送事業者)の権利
 (保護期間:放送又は有線放送が行われたときから50年

著作隣接権内   容
複製権放送を録音・録画または写真的な方法により複製する権利
再放送権・有線放送権放送を受信して再放送したり、有線放送したりする権利
送信可能化権実演家と同じ
テレビジョン放送の伝達権  テレビジョン放送又はこれを受信して行う有線放送を受信して、映像を拡大する特別装置(大型ビジョンなど)を用いて公に伝達する権利

4 無断使用可能なものもある!

 このように著作権をみていくと、著作者や著作物の利益ばかりを保護するようにみえますが、実は著作物を利用する側の利用者・消費者の利益も考えられています。これは、一定の場合には著作権を制限して、著作物を自由に利用できることになっています。

自由に使える場合内   容
私的使用のための複製個人的や家庭内など限られた範囲内で利用するために著作物を複製することができる。 但し、デジタル方式の録音・録画については、著作権者に対して補償金の支払いが必要。
図書館などでの複製法令で定められた図書館(公立・大学図書館など)に限り、利用者に対し複製物を提供できる。
引用自分の著作物に、引用の目的上正当な範囲内で、公表された著作物を引用して利用することができる。
学校・教育学校教育の目的上必要と認められる限度で教科書に掲載できるが、著作者への通知と著作権者への補償金の支払いが必要。
その他、授業に使用する場合や試験問題に使用する場合の複製も可。
福祉点字によって複製できる。視覚障害者のための録音や、聴覚障害者のために音声などの字幕送信ができる。
報道新聞、雑誌に掲載された時事問題に関する論説を他誌に転載できる。 公開された政治上・裁判上の演説や陳述は自由に利用できる。
美術美術や写真の著作物などの原作品の所有者は、その作品を展示できる。 公開の場所にある建築物や銅像などは、写真撮影やテレビ放送ができる。 展覧会の開催者は、紹介用の小冊子に展示する著作物を掲載できる。
プログラムの複製などプログラムの所有者は、利用するために必要な限度内で、プログラムを複製、翻案(改変)することができる。

5 権利侵害には?

 権利侵害は、著作権に限らず前述の知的財産権全般について起こっています。明らかな故意である場合は論外ですが、正しい知識がなかったり、これらの権利に対する認識の低さなどで、知らぬ間に 他人の権利を侵してしまっているケースも少なくありません。

「どうだろう?」「ひょっとして・・」 と思ったら、特許庁文化庁 その他関連団体や専門家に相談することをお勧めします。

 著作権者の許諾を得ないで著作物を無断で利用することを著作権侵害行為といいます。著作権法では、これらの侵害行為に対して次のような対抗措置をとることができます。

(1) 民事上の請求
 権利侵害の事実があるときは、権利者は権利の侵害者に対して以下のような請求をすることができます。先ずは内容証明郵便で警告します。
 ①損害賠償請求
 ②侵害行為の差止請求
 ③不当利得返還請求
 ④名誉回復等の措置の請求

(2) 刑事罰
 著作権侵害行為はれっきとした犯罪とされていますが、被害者が告訴しなければ処罰されません(親告罪)。 著作権侵害を行った者は、10年以下の懲役又は 1000万円以下の罰金に処せられます。但し、侵害者が法人の場合は、3億円以下の罰金となります。

 くり返します。著作権侵害は犯罪行為です。くれぐれも気を付けましょう。

おまけ

 雑誌やポスターなどの写真の下に © という表記がされているのをよく見かけますね。これは、一般的に「マルシー表示」と呼ばれている、著作権の所在を明示する記号で、opyright(コピーライト =著作権)の略表記です。

 著作権の扱い方は国によって異なっており、著作権が発生する条件もそれぞれです。日本のように著作物が創作された段階で、手続き無しで自動的に権利が発生する「無方式主義」の国と、著作物としての登録や表示を行って初めて権利が発生する「方式主義」の国があります。

 日本はベルヌ条約(文学的および美術的著作物の保護に関する条約)に加盟する無方式主義国ですから、日本で撮られた写真は、日本では著作権の保護下に入ります。ところが、この写真を「方式主義」の国へ持っていくと、なんらかの手続きを踏まなければ著作権の保護はされなくなります。非常に面倒なことになりますね。

 こんなことを防ぐために、万国著作権条約というのが成立し、そこでは著作物に © と著作者名・ 発行年を表示すれば、どの国でも著作権が保護されるようになりました。また日本国内では、これらの表示によって事実上の著作権の所在を公示し、権利侵害への警告の役目と考えられています。

 たまに © マークだけが付いているような場合がありますが、日本ではあまり意味がないとはいえ表示するなら正規の方法で付すようにしましょう。

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